1. 高速なシナプス伝達とその可塑性のメカニズム

神経細胞は1ミクロンよりも小さいシナプスを介して、1ミリ秒ほどの間に他の細胞に情報を伝えます。シナプスでは、情報を伝える神経細胞から「グルタミン酸」等の伝達物質が放出され、情報を受け取る細胞の細胞膜上(シナプス後膜)に存在する受容体に結合することで、情報が伝達されます。この正確・高速な情報伝達は神経系のはたらきの重要な基礎ですが、それを実現する分子的な仕組みには不明な点が多く残っています。これは、シナプスが小さすぎて、それをミリ秒以下の高速で精密に制御し、そこで何が起こるかを調べることが実験的に難しいからです。私たちは、微小なシナプスから直接電気記録する職人技や、局所的に光照射してシナプスの分子を制御する技術を駆使して、精巧な分子装置の謎に取り組んでいます。 また経験に応じてシナプスでの情報伝達効率が長時間変化するシナプス可塑性は、記憶・学習の基盤となる細胞レベルの仕組みとして注目され、盛んに研究されています。この可塑性の分子メカニズムについても研究しています。

2. 神経活動とシナプス可塑性の可視化による神経回路の時空間解析

これまで、神経系の機能を精密に解析するのにパッチクランプ法に代表される電気生理学的計測が強力な手法として 役立ってきました。一方で、多くの神経細胞がつくるネットワークや膨大な数のシナプスのどこで何が起こって ひとつの情報をコードするか等を理解するには、神経細胞やその集団の活動を同時に捉える空間的な解析技術が必要となります。 近年の蛍光タンパク質と顕微鏡技術・画像取得装置の飛躍的発達により、ミリ秒レベルの高速の神経細胞の電気的活動を、 光により捉えることが可能になってきました。私たちの研究室は、細胞膜電位を蛍光変化として検出するイメージング分子 を独自に改変して、これまで調べることが難しかった単一神経細胞における時空間演算を調べたり、多数の神経細胞の 活動を高い時間分解能で同時検出することを可能にしています。 また、シナプス可塑性が起こった場所に集まる蛍光タンパク質を独自に開発することに成功し、記憶・学習のプロセスを 可視化するためのツールを得つつあります。これを使うことで、脳の中の一つ一つの記憶の空間分布を同定することで 記憶とは何かを具体的に明らかにしたいと考えています。
-樹状突起内で細胞質に広く分布している蛍光プローブ(左)が、細胞全体で一気にシナプス可塑性を起こすと、持続的に細胞膜直下に集積する(右)- 

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